更新日 : 2013-10-15 19:18:55

火事と共に生きるユーカリ

なにがすごいの?

オーストラリアの森の4分の3を占めるのがユーカリの樹です。
ユーカリの葉を食べているコアラの姿は、とても愛くるしいものです。

オーストラリアは1年を通してとても乾燥した地域で、山火事が頻繁に起こります。
ユーカリのつぼみは、葉などから作られる成長を抑制する物質により発芽が抑えられています。
山火事の炎によって、葉が焼け落ちることにより、成長を抑制する物質がなくなり、ユーカリのつぼみは発芽します。
火災直後のユーカリの緑の葉は、この新しい後生芽から生産されています。

ユーカリの樹が、生長していく過程でも山火事は発生します。
他の樹木と違って、ユーカリは火事のときも自分を守ることができます。
幹の燃えやすさが、幹の外側の皮(樹皮)と内側にある層(形成層)では異なるのです。
樹皮が非常に燃えやすい性質を持ち、樹皮に火がつくと幹から剥がれ落ちるので、幹の内側まで火が燃え移ることはありません。

樹皮が犠牲となり、形成層とよばれる、樹木にとって大切な部分を守られるのです。
また、ユーカリの根っこの部分には栄養源や、芽の原料を蓄えています。
こうして、火災の後も蓄えられた栄養源により成長し続けることができ、また新しい芽をつけることもできます。

どうやって役立てるの?

ユーカリは火を使って、自分を発芽させる一方、成長した段階では火から体を守るという複数の火に対するメカニズムを体内に持っています。
その戦略は、火災との関わりあい方を私たちに教えてくれます。

どんな研究をしているの?

ユーカリには、普段は葉や枝から作られる物質(成長抑制物質)によって発芽が抑えられているつぼみが存在することがわかりました。
炎によって、葉や枝が焼け落ちてしまうと、発芽を抑えられていたつぼみが発芽します。
こうして火災直後にも、生きるのに必要なエネルギーを作りだす光合成を行うことができることが分かりました。

どんな技術開発ができるの?

ユーカリの木がうまく火を利用し、また火によってさらに生命力を高めるというシステムを私たちの生活の中に取り入れることができるかもしれません。
ユーカリは、火に対して1つ以上の反応システムを持っていて、それを様々な場面で使い分けています。
火災の色々な段階で、反応できるシステムをもった新しい火災報知機や消火器を開発できるかもしれません。

またユーカリのように火を利用できるような機能も備えた機器が開発できれば、火災はただの敵ではなくなりますね。
例えば火災が起きてしまったときに、火のエネルギーで消火器が動けばユーカリ的戦略と言えるかもしれません。
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