更新日 : 2013-10-13 09:00:59

大草原の根で土壌改良

なにがすごいの?

大草原の根で土壌改良-「なにがすごいの?」画像
(C) Momoko Minakawa
植物を大きく分けると、一年生植物と多年生植物に分類することができます。
一年生植物(一年草)は、その名の通り、種から芽が出て成長し、花が咲き、枯れるまでのサイクルが一年の植物です。

一方、多年生植物(多年草)は、二年以上生存する植物のことをいいます。一年草に比べて、多年草は根を地中にとても深く広く張ります。
この根の伸張によって土壌が耕され、根と土の間にできる隙間は酸素や水の通り道となり、理想的な団粒構造(土の小さな粒子が集まってできた構造で、団粒と団粒の間に隙間が出来る)ができます。
根に付着する菌や微生物も根の生育とともに酸素や水を得て活性化するので、絶妙なエコシステムのバランスが生まれます。
多年草の根の成長によって、土壌の保水性が高まり、豊かにする上に、根をいっぱい張ることで、他の雑草の侵入を防ぎます。
大草原など、自然に見られる植物は、自分達の力でけなげに生きているのです。

どうやって役立てるの?

大草原の根で土壌改良-「どうやって役立てるの?」画像
一種類の穀物や野菜などの作物のみ広範囲で栽培する「モノカルチャー」は、短期間で高い生産量を得られるので、アメリカをはじめ多くの国々で行われている一般的な農業形態です。

現在、世界で栽培されている作物の80%が一年草です。
しかし、これらの作物の栽培には化学肥料や殺虫剤などを使用しなければならないために労働力と費用がかかり、さらに安全性にも影響があります。
また収穫期までしか栽培しないので,次の作付けまでの間で耕作地の土壌浸食や地力の低下、水質汚染などの問題が多く発生してしまいます。

一方、多年草は土壌浸食せず丈夫に育ち、毎年作物を植え替える必要もありません。
この多年草の持つ長所や利点に着目すれば、従来の一般的な農業形態に替わる新しい農業ができるかもしれません。

どんな研究をしているの?

アメリカのある研究者は、アメリカの大草原の殆どを覆う多年生植物が、肥料や農薬、そして剪定など人の手を入れなくても病気にならず、元気に成長していることに気づきました。
そして、これらの多年生植物の中から生産性の高い品種(イネ、ライ麦、マメ科の植物など:Eastern gamagrass、Wildrye、Illinois bundleflower)を選抜し、それらを混合して試験的に栽培し、実際に栽培が可能であることを立証しました。

どんな技術開発ができるの?

現在普及しているモノカルチャーに対して、持続可能な農業政策は世界各地で試されています。
植物は環境や場所によって(エコステム)生育が異なるので、自然をまねた同じ農業政策がどの地域でも成り立つわけではありません。
その土地固有の植物・気候・土壌のタイプ・文化を考慮した上で、最適な農業政策を決定することが可能となります。

地域に根をおろした農業政策が成功した例は、アメリカ、ランド研究所の大草原農業を初め、オーストラリアのパーマカルチャーや日本の自然農法など地域に“根をおろした”農業政策が成功した例が幾つもあります。

【参考】
The Land Institute(英語)
・Glover, J. 2003. Characteristics and impacts of annual vs. perennial systems. ・Quincy, Florida. Gainesville, Florida: University of Florida's Institute of Food and Agricultural Sciences
Ecosystem demonstrates sustainability: prairie - Ask Nature - the Biomimicry Design Portal: biomimetics, architecture, biology, innovation inspired by nature, industrial design(英語)
・自然と生体に学ぶバイオミミクリー ジャニン ベニュス, オーム社, 2006
・自然農法「わら一本の革命」, 福岡正信著, 春秋社, 1994
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