更新日 : 2013-03-09 12:59:12

ムール貝が作り出す接着性コラーゲン

なにがすごいの?

フランス料理に出てくるムール貝(ムラサキイガイ)は、海の中で岩や船底などにくっついて生息していて、波が激しいときにも流されることはありません。

以前ここでご紹介した水中の接着剤フジツボのようにムール貝も接着の難しい水中で特別な接着剤を作り出します。

水が物質の表面に入り込む力が強いので、普通の接着剤では2つの物質を水中でくっつけることはできないのです。
ムール貝は海の中で接着性のあるタンパク質を分泌し、足糸と呼ばれる糸を作り出します。
足糸の先端は2~3分で岩などの接着表面にたどり着き、吸盤のような付着盤の形をして接着表面に強固に接着します。
1本の足糸を形成すると、すぐに次の足糸が形成され、2日間では約100本の足糸が形成されるといわれています。
足糸は、細く短いコラーゲン繊維が接着性タンパク質で固められたものであり、絹糸によく似ています。
いったん、ムール貝が接着すると何年も離れない強度をもちます。

どうやって役立てるの?

水中で使える新しい接着剤として役立てることができるかもしれません。

どんな研究をしているの?

ムール貝は岩やガラスだけでなく、テフロンやポリプロピレンなど様々な表面に水中で接着することが分かりました。
ムール貝の接着性タンパク質のアミノ酸の組成についても調べられ、10個ほどのアミノ酸配列が75回以上も繰り返されて接着性タンパク質が作られていることがあきらかになりました。
この繰り返し配列に接着性の基本構造が含まれていると考えられています。
また、繭がつくりだす絹糸のように、ムール貝の足糸も人工的に大量に合成するという開発も行われています。

どんな技術開発ができるの?

水中で、短時間に強力な接着機能をもつムール貝の接着性タンパク質は医療分野での応用が期待されます。

私たちの体は水で満たされているので、角膜手術や歯のインプラント治療など様々な手術で無害で強い接着剤は役立つでしょう。

【参考】
・岡本忠, 最近の接着性タンパク質研究の進歩、近畿大農紀要25, 61~68, 1992
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