更新日 : 2013-10-12 14:01:19

何千年もの歴史を刻む年輪

なにがすごいの?

節くれだってねじれた姿で、カリフォルニアの山に生えている松の仲間(ブリッスル・コーンパイン:写真1)は、地球上に生存する最古の植物で、樹齢4700年と言われています。
長年にわたり過酷な気候に耐えてきたこのような老木は、私達の知らないその長い歴史を年輪に刻んできました。

木を横に切るとみえる円形の年輪は、「成長輪」とも呼ばれ、1年に1本ずつ増えていく丸いしわのことを言います。
太陽をいっぱい浴びられる春から夏に、樹木はぐんぐん成長をすることで、形成層に薄い膜を持つ細胞が沢山できます(写真2の薄い茶の部分)。
逆に太陽の少ない冬には、成長が止まってしまうので、厚い膜を持つ細胞ができます(写真2の濃い茶の部分)。

また、細胞の成長は雨の多さや気温の変化など、その年の気候によっても大きく左右されます。
そうしてできる、薄い膜と厚い膜の細胞のしわが重なって、年輪は形成されるのです。

どうやって役立てるの?

日本の気象データは、過去100年のものまでしか保存されていません。
気候や環境によって変化する年輪のパターンを調べることで、私達の知らない過去の気候変動について科学的に解明することができるかもしれません。

どんな研究をしているの?

レオナルドダヴィンチは、樹木を観察しているうちに、降水量と年輪の成長が関係していることに気づきました。
その後、アメリカのある天文学者は、太陽にある黒点の動きと地球の気候変動が関係していることに着目して、年輪年代学を確立しました。
現在では、多量の樹木のサンプルから年輪のパターンを調べ、地域ごとに年代・樹種別の年輪データバンクを作成・解析することで、過去の気候変動の推移を探ることができるようになりました。
欧米で年輪年代の測定を行う場合、数十年分のデータで年輪のパターンの照合が可能です。

一方で、気候の違う日本では、年輪のパターンが共通してしまうため、何百年分という大きなデータを取ることで、年輪のパターンを照合できることがわかりました。
今では、現在から弥生時代までに遡る年輪データが得られています。

飛鳥時代に聖徳太子が創建した法隆寺は、現存する世界最古の木造建築です。建設に使用されたヒノキ材が伐採されたのは、今まで591年とされてきましたが、年輪年代測定によって正しくは594年だったことが判明しました。

この測定結果から、法隆寺は過去に一度も火災で燃えていなかったことがわかり、教科書も書き換えられることになりました。

どんな技術開発ができるの?

年輪から過去の気候変動パターンを解明することで、将来の気候変動を予測したり、干ばつや水害など温暖化の影響に対する対応策が見つかったりするかもしれません。
何千年という長い歴史を見てきた樹木から教わることは、これからもたくさんでてきそうですね。

【参考】
・朝日百科 植物の世界 朝日新聞社
古代文明の世界へようこそ|画期的な年輪年代法
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