更新日 : 2012-12-27 10:46:46

ひとりでに組み上がる「自己組織化」

なにがすごいの?

紙で立方体のサイコロを作ろうとすると、6枚の紙を貼り合わせたり、立方体の展開図を切り出したりしますね。
このように、私達が何かを作るには、自分の手を使う必要があります。

ところが自然界には、外から手を加えなくとも自発的にある組織や構造をつくり出してしまう仕組みがあり、これを「自己組織化」と呼びます。
言わば、立方体の展開図がひとりで組み上がってしまう訳です。

自己組織化によってある形や構造を作る時には、外から大きな力やエネルギーを加える必要はありません。
きっかけとなるのは、少しだけ周りの温度が上がったり、ある物質の濃度が上がったりと、わずかな変化だけで十分なのです。

自己組織化は、とても優れたメカニズムなのです。

どうやって役立てるの?

自己組織化を利用して、新しいMEMS(微小な機械装置)のデザイン設計に役立てることが出来ます。

どんな研究をしているの?

ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らは、フォトリソグラフィーの技術(光を利用してパターンを転写する)を利用して、特殊な薄いフィルムから、一辺が100マイクロメートルという微小な立方体の展開図を切り出すことに成功しました。
この展開図は自己組織化の性質をもっていて、ある化学物質に反応して自ら立方体に組み上がります。

研究室ではさらにこの「自己組織化する立方体」を応用して、大きさ0.07センチと砂粒よりも小さい「マイクログリッパー(ミクロサイズの手)」を製作しました。
マイクログリッパーは、温度変化や化学物質に反応して自己組織化することで、「手」の部分が自動開閉して物を掴んだり離したりすることが出来ます。

実験では、磁石で誘導されながら細く曲がりくねった透明な管の中を進み、細胞の固まりから細胞片を掴んで引き離すことに成功しました。

ジョンズ・ホプキンズ大学 化学・生物分子工学研究科グラシアス研究室(英語)
(マイクログリッパーが細胞を掴む様子を動画で見ることができます)

どんな技術開発ができるの?

微小な立方体を容器に見立て、薬を入れたコンテナを病変部(ケガや病気を負った部分)まで誘導し、直接薬を投与することが可能になるかも知れません。

マイクログリッパーは、画期的な外科手術方法の開発に繋がる可能性があります。

将来の外科手術は、カメラやセンサーを搭載したマイクログリッパーでがんの細胞などの病変部を除去するスタイルになるかも知れませんね。
メスを使わないので、幼児やお年寄りでも体への負担が小さい手術方法となるでしょう。

微細な上に、有線で動力を送ったりコントロールしたりする必要がないため、これまで直接手術するのが難しかった部位に外科手術を施すことができるようになるかも知れません。

また、構造がとても単純なので、大量生産することが可能です。
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