更新日 : 2013-12-09 06:54:32

効率的なネットワークを作る粘菌

なにがすごいの?

アメーバのような姿をした単細胞生物の粘菌は、脳を持っていませんが、変形移動して餌の微生物を食べる一方で、胞子を作って増えます。
まるで、動物と植物のような性質を併せ持つ不思議な生き物です。

ある種の粘菌には、餌を求めて、餌と餌の最短距離をつなぐ形に変形したり、光を嫌うので、光を当てることで任意の形に変形したりする性質があります。粘菌を迷路の中に設置しその迷路の端と端にえさを置くと、一旦は迷路全体に管を広げますが、最終的には餌と餌の最短距離をつなぐ管のみを残し、それ以外の部分は衰退させてしまいます。

単細胞の粘菌は脳を持っていませんが、最適な餌の経路を見つける凄い生き物なのです。


どうやって役立てるの?

粘菌が作り出した「鉄道網」  地図上の「東京」に粘菌を、関東「周辺都市」に餌のオートミールを置いた実験。
(C) Tero, A., et al., Rules for Biologically Inspired Adaptive Network Design, SCIENCE, vol. 327, no. 22, 439-422, 2010.
合理的な都市間ネットワークの構築やインフラ整備に役立てることができます。
もし災害などでネットワークの一部が欠けてしまっても、残った部分を使って再び効率的なネットワークを作り直すことができます。

また、粘菌の生体システムを応用して、自律型モジュラーロボット開発に役立てることができます。

どんな研究をしているの?

粘菌型モジュラーロボット「スライミー」
(C) 東北大学大学院工学研究科石黒研究室
日本のCRESTの研究グループは、日本の首都圏を模した形状の培地と粘菌を用いて、鉄道の都市間ネットワークの設計シミュレーションを行いました。

都市に相当する箇所にエサのオートミールを設置し、海や山に相当する部分には深度や高度に応じた強さの光を当てて、敷設コストを設定します。
そこに粘菌を設置したところ、実際の日本の鉄道網と似たネットワークが形成されました。

また東北大学の石黒研究室のグループは、粘菌の動きを模倣した自律型のロボットを製作しています。

CREST 生物ロコモーションに学ぶ大自由度システム制御の新展開

東北大学 大学院工学研究科 電気・通信工学専攻石黒研究室

どんな技術開発ができるの?

粘菌を使って、都市間ネットワークの構築や水・電気・水道・携帯電話などのインフラ整備の際のモデルを作成するようになるかも知れません。

またこのようなネットワーク構築の過程は、腫瘍が血管網を発達させる仕組みを解明するのに役立つかも知れません。
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