更新日 : 2013-11-06 19:56:50

虫の体のスーパーゴム

なにがすごいの?

ミルンヤンマ飛翔
(C) 長崎のトンボ
私たちは運動するときに筋肉を使って力を生み出していますが、この力のうち半分は熱として消費されてしまうため、残りの約50%しか使いきれていません。
しかしノミはジャンプするときに蓄えたエネルギーを97%もの割合で使うことができます。
良く跳ねるスーパーボールでさえ与えられたエネルギーの80%しか使いきることができません。

この秘密はノミの脚の付け根にあるレジリンというゴム状のタンパク質にあります。
ノミは筋肉だけでなくこのレジリンを使うことで、蓄えた力をわずか1/1000秒の間に開放し、自分の体の約100倍の高さまでジャンプすることができるのです。

また、ハチは一生のうちに5億回以上羽ばたくと言われていますが、羽根の付け根の部分にレジリンが存在するため摩耗することなく飛び続けることができるのです。

どうやって役立てるの?

トンボの羽根の付け根のレジリン
(C) Nature vol.437, p.p999-1002(13 Oct 2005)
現在のゴムやバネに代わる全く新しい長寿命の高弾性材料が作ることができます。
具体的には、心臓や椎間板など繰り返し変形する部分の生体材料に利用することが期待できます。
また、新しい遊び道具も作れるかもしれません。

どんな研究をしているの?

虫の体のスーパーゴム-「どんな研究をしているの?」画像
(C) 名古屋市衛生研究所
ショウジョウバエの遺伝子の中にレジリン様タンパク質のもととなる遺伝子があり、この遺伝子の一部をクローニングし大腸菌を作用させることで水溶性のレジリン様タンパク質を作ることができます。
さらに、光触媒反応を用いることで反応を制御しながら分子間に架橋構造を持たせることができ、ゴム状のレジリンをつくることに成功しています。

この人工レジリンは蓄えたエネルギーのうち97%を使うことができ、ほとんどエネルギー損失がありません。
他のゴム状素材のものと比較すると、クロロブチルゴム56%、ブタジエンゴムが80%ですので大変優れていることが分かります。
また、元の大きさから3倍以上の大きさに引き伸ばすことができます。 

工業的・生物医学的に利用されることが期待されていますが、現段階では強度が十分でないため実用化には至っていません。

【参考】
・Synthesis and properties of crosslinked recombinant pro-resilin
Nature vol.437, p.p999-1002(13 Oct 2005)
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