更新日 : 2013-08-08 07:34:25

軽量で強固な設計のウマの足の骨

なにがすごいの?

馬の前肢
(C) Jurek Durczak
ウマは、人や荷物を運んだり農耕のために鋤(すき)を引いたりと、古くから人との関わりがとても深い動物です。

そんな働き者のウマの足のつくりを見てみましょう(写真1)。
人の足の「すね」に見える細く長い部分は、「第三中手骨」という一本の太い骨から成っていて、ここで前肢にかかる全体重を支えています。
骨の断面を見ると、真ん中に血管を通すための穴(あな)が空いており、さらに孔の周りには小さな穴がたくさんあることがわかります(写真2)。

穴の空いた固体に圧力が加わると、孔の周りに力が集中してそこからヒビが広がり、破損の原因となってしまいます。
ところが、ウマの「第三中手骨」には大きな力が加わっても、簡単に折れることはありません。
なぜでしょう?
その秘密は、たくさんの小さな孔にあります。
大きな穴の縁(ふち)に集中した力を、小さな孔が周囲のより頑丈な部分へ逃がす働きがあるのです。
このたくさんの小さな穴によって、骨の内部にヒビが入ったり、小さなヒビが成長したりすることを防いでいるのです。
小さな穴はウマの進行方向に多く偏っていて、前進するときに足にかかる大きな力を逃がすためなのです。
また、穴があることで、骨の重さを軽くすることができます。
骨の強度を保ちながら、骨の軽量化にも成功しているウマは凄いですね。

どうやって役立てるの?

馬の第三中手骨断面の軟X線写真
(C) 「馬に見られる病気」、BTCニュース 72号、2008
構造物の強度を落とさずに、軽量化させたい場合に役立てることができます。 

どんな研究をしているの?

ニューヨークのユニオン大学機械工学科のランポフ博士は、ウマの骨の構造の特徴をヒントに、同じ重さでも強度が2倍のプレートの開発に成功しています。

どんな技術開発ができるの?

ワイヤーや燃料・油圧パイプを中に通さなければならない飛行機、車やボートなどの軽量化と強度増加に応用することができます。
強度を保ちながら、機体の構造に孔を持つことで機体が軽くなり、その分燃料を節約することができます。
地震の多い日本では、建物の骨組みや壁の構造材としての応用が期待できますね。

【参考】
・「前肢骨格辞典」JRA競走馬総合研究所
名前(必須) : メール :
タイトル(必須) :

※コメントの公開は承認制となっております。
※コメントを書き込んでも承認されるまでは表示されません。
※メールアドレスは管理者から直接メールがほしい場合に入力してください。入力しても表示されません。