更新日 : 2013-07-19 07:34:13

「群れ」でつくるアリの行列

なにがすごいの?

アリの行列は、庭や公園などでよく見かけますね。
「アリはどうして行列をつくるのだろう?」と不思議に思うことはありませんか?
これは、以前紹介した「魚のスーパーセンサーに学ぶ無事故社会」や「どんなに群れてもぶつからない」と同じく、アリも餌を探すときは、
1 : フェロモンを出し
2 : ほかのアリがそのフェロモンを感知して道を辿る
という単純なルールに従うことで、群れ全体が複雑な行動ができているからなのです。

どうやって役立てるの?

魚や鳥が天敵から身を守るために群れを作る時のルールや、アリが餌を取るために群れを形成するためのルールはアルゴリズムと呼ばれ、何か問題を解決するときの為の手順という意味があります。

学校へ行く前の日は事前に、宿題をする、ご飯を食べる、お風呂に入る、洋服の用意をする、かばんに筆記用具を入れる・・・などと、学校へ行くための手順をたてますよね?
これも学校へ行くためのアルゴリズムと言えます。

アルゴリズムをプログラムとして表現することで、今あなたが見ているこのページも作られているのです。
アリの行動を参考に、手順を工夫し、よりよい手順を見つけるのがアルゴリズムの研究をすることで、人間社会の複雑な課題、たとえば交通渋滞の緩和やトラックの走行ルート決定や航空管制といった問題を解決することができるでしょう。

どんな研究をしているの?

昆虫学者と商品の流通(物流)を研究する学者がアリの行動について詳しく研究しました。
女王アリ、王アリを筆頭に、副女王、副王、働きアリ、兵隊アリといった階級ごとに分かれています。
この研究では集団行動をする働きアリの行動に焦点をあて、どのように餌を見つけるのかが観察されました。

アリは餌を探すためにうろつきます。
アリは餌を見つけたら、フェロモンを出しながら巣へ帰ります。
ほかの周りをうろついていたアリもこのフェロモンを感知すると、うろつくのを止めて、餌を見つける道を辿ります。
フェロモンは時間がかかるほど、つまり、餌への道が遠いほど、早く蒸発してしまいます。
餌への道が短ければ、時間もかからずフェロモンも長く残ります。
それで、後からきたアリが餌までの道を見つけると、周りのアリもその道を辿る可能性が高くなり、結果すべてのアリが列をなしてぞろぞろと行進するのです。

アリがフェロモンによって餌までの経路を見つける際の行動からヒントを得て、流通(物流)を効率的に行うアルゴリズムが開発されました。

どんな技術開発ができるの?

アリのアルゴリズムに基づいた戦略で、トラック輸送の最善ルートを見つけることができます。
ある生産会社では、アリのアルゴリズムを利用して、いくつかの生産拠点からトラックを使って、多くの顧客に様々な商品を納入する最適ルートを見つけ出しました。
これによって、燃料費や人件費など輸送にかかるコスト削減にも繋がりました。

この仕組みはあるセールスマンが幾つかの都市を一度ずつ訪問して出発点に戻ってくるときに、移動距離が最短になる経路を求める、巡回セールスマン問題へも適応されました。

NHK教育テレビ:アルゴリズムたいそう&こうしん
2人1組で行う体操。
アルゴリズムがテーマで、1人では意味の無い動きが、2人並ぶと関連性のあるものとなる(『しゃがむ動作』が『腕を横に振る』動作と組み合わさることで『腕を避ける動作』になる、等)。
一人でやると訳の分からない体操ですが、皆でやることでアルゴリズムが体験できます。

【参考】
・Dorigo, Marco, and Thomas Stutzle. Ant Colony Optimization. MIT Press, 2004.
・Bonabeau, Eric, and Christopher Meyer. "Swarm Intelligence: A Whole New Way to Think About Business." Harvard Business Review (May 2001), 106-14.
アリのフェロモンを使ったえさ取り行動
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