更新日 : 2013-07-13 07:11:23

ラックムシが作る保護カバー

なにがすごいの?

ケリアラッカ(インドのラックムシ)の集団(コロニー) 小枝を集めると赤い染料がとれます。
(C) Bohmer (2002)
インドには、カイガラムシの仲間のラックムシという小さな昆虫がいます。
「塗料」という意味の「ラッカー」の語源となったと言われています。

ラックムシのメスの成虫は翅がなく、アカシアやイチジクなどの木の小枝にくっついて集団(コロニー)で生活し、樹液を吸って「ラッカー」と呼ばれる成分を体外に分泌し、天然の樹脂のカバーで自分たちの体を覆います。
小枝の周りのメスのコロニー全体がそのカバーに覆われます。

こうして、メス達は自分たちのお腹にいる子供たちを敵から守り、次の世代が始まります。
ラックムシは植物を食料として食べるだけではなく、体を守るためのカバーの原料として再利用しているのです。
ラックムシが作りだすカバーの成分は粘着性に優れ、丈夫です。

どうやって役立てるの?

また、ラックムシが作り出すラッカーの成分は、日本の漆の成分に似ています。
家具や食器になどに塗って加工する塗料に適しています。
紫外線に弱い漆に比べて、インドのラックムシの作り出すラッカーは紫外線に当たっても劣化しないと言われています。
より長持ちして、安価な塗料として役立つでしょう。

どんな研究をしているの?

インドのラックムシが作り出すラッカーの成分について、詳しく分析されています。
その結果、天然の樹脂(樹皮から分泌される物質)が約7割を占め、ワックス、染料、香りを持った成分や蜜で構成されていることが分かりました。

ワックスとは油脂状の物質で、室温ではなめらかです。
ラックムシからラッカーが分泌されるとき、このワックスがラッカーを分泌する「分泌腺」という穴が詰まるのを防ぐ役割をしていることが分かりました。

また香り成分を分析すると、ムスク(じゃこう)と呼ばれる雄のジャコウジカの出す香りに似ていることが明らかになりました。
この強そうな香りで敵を追い払っているのかもしれません。

蜜は植物を食べたときの、余分な糖分であると考えられています。

どんな技術開発ができるの?

ラックムシが作り出すラッカーは果物や野菜の色のつや出しに、すでに使われていますが今後は、接着剤や染料、香料を兼ね備えた多機能の天然物質としての利用も期待できます。
特に紫外線によって劣化しないという素材はインド由来のラックムシならではの性質であり、ビルの塗装にもっと有効に活用できるかもしれません。

ラックムシの体内には赤の染料が多く、古代よりインドでは衣料用の染料として使われてきました。
ラッカーの香り成分や染料をいかした紫外線に強い化粧品として、新たな商品開発の素材としても期待ができます。
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