更新日 : 2013-11-23 09:56:53

くるくる回って落ちるカエデの種子

なにがすごいの?

カエデの種が、風に乗ってくるくると落ちていく姿は可愛いですね。
何故くるくるまわるのでしょうか?
それは、種子を遠くに飛ばすため、少しでも空中に留まっていたいからです。

カエデの仲間の種子は、「翼果(よくか)」とよばれる2枚の羽をもつ果実の中にあり、この一枚の羽の片方の先端に種があります。

一見アンバランスな形に見えますが、羽の長さと種の重さは、カエデ独特の回転ができるよう絶妙なバランスで保たれているのです。

カエデの種子が滞空する原理は、実は密を吸うために空中でホバリングするハチドリや飛翔するトンボの原理と全く同じで、回転するときに羽に発生する小さな空気の渦(翼端渦)のおかげで、羽の上方の空気圧が下がり、羽を吸い上げるのです!
揚力を得たカエデの種子は、風に乗って空中を長時間滞空します。

強い偏西風が吹く地域に生息する楓は、この力を大いに利用しているのです。
風のない熱帯雨林で滑降できるように適応したアルソミトラの種子とは逆に、偏西風や季節風を利用したカエデの知恵です。



どうやって役立てるの?

Sycamore Technologyのシーリングファン
超小型ヘリコプターや超小型無人機(MAV)、惑星探査ロボットに装着する着陸用パラシュートの設計に役立てることができるかもしれません。
また、カエデのデザインを模倣して、空気や水の流れを最適化する機械やファンを開発できるかもしれません。

どんな研究をしているの?

アメリカの学者は、カエデの種子に発生するこの揚力の原因について研究しました。
その結果カエデの種子の回転は、前縁の上方に、小さな空気の渦流(LEV:翼端渦)を発生させ、その渦流によって、翼上方の空気圧が下がり、翼果を吸い上げる効果が生じていることがわかりました。
回転しない種子と比較すると、楓の種子が作る渦は、揚力を2倍にします。

グライダーのように滑降するアルソミトラ・マクロカルパの種子と比較すると、カエデの翼の面積はあまり大きくありません。
しかし、くるくる回ることで空気をうける円板状の面積を十倍も大きくし、 揚力を高め、落下速度をゆるめることで、滞空時間を長く保つのです。

※揚力(ようりょく) : 物体の周りに生じる循環(渦)により上面と下面の圧力に差が正じ、その圧力差の総和として生じる力(wikipedia)

どんな技術開発ができるの?

オーストラリアのある会社は、くるくると回りながら落下するカエデの種子の形状をヒントに、一枚羽の新しいシーリングファン(天井に取り付けられた回転する羽)を開発しました(写真2)。

三、四枚の羽で空気を循環させる従来のシーリングファンに対して、カエデの種子の形をした一枚羽のシーリングファンは、ゆっくりとした回転速度にも関わらず、従来のファンと同様に空気を循環します。
これにより、消費エネルギーを削減し、羽が回転する際のファンの音も最小に抑えることに成功しました。



【参考】
Maple Seeds and Animals Exploit the Same Trick to Fly | Caltech(英語)
科学技術振興事業団:空を飛びたい
Sycamore Ceiling Fan(英語)
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