更新日 : 2013-06-24 18:51:43
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人に優しいクモの糸

なにがすごいの?

クモの糸が軽くて非常に強いことは、すでに「軽くて強いクモの糸」で紹介しました。

クモの糸は「フィブロイン」と「セリシン」という2種類のタンパク質から構成されています。
1本の糸は、内側に2本フィブロインと、それを取り巻くように外側にセリシンという構造になっており、クモの糸の場合、その割合はおよそセリシンが20~30%、フィブロインが70~80%です。

このセリシン・フィブロインが私達の生活、特に医療の世界で有用な働きをする機能を持つことがわかってきました。

どうやって役立てるの?

セリシンには細胞分裂を促進したりするなどの作用が、フィブロインには細菌の数を制限する「制菌作用」などがあることがわかりました。

このような性質は、医療分野で応用することができます。
私たちの体はタンパク質からできており、同じようにタンパク質からできているセリシンやフィブロシンは人体と馴染みやすいからです。
生体親和性と制菌作用の特性を生かして、手術用の縫合糸として既に使われています。

人工皮膚の移植、傷口の保護など生体医療の現場では、生体親和性や細胞分裂を促進するという特性の活用が期待されています。

どんな研究をしているの?

現在、フィブロイン・セリシンの合成タンパク質繊維が持つ特性である「細くて高い強度と伸縮性」をそのままに、環境に優しい新しい繊維や素材として実用化するための研究が進められています。
日本のバイオベンチャー企業であるスパイバー社は、バクテリアにクモの糸の組み換え遺伝子を注入し、培養したバクテリアにフィブロインを合成させることに成功しました。
また、大手メーカーと共同して、この合成フィブロインを「タンパク質繊維」として合成する技術も開発しています。

どんな技術開発ができるの?

私達の身の回りでよく使われている化学繊維は、石油から合成されますが、合成する時には大量の二酸化炭素が発生します。
また、土壌中のバクテリアは化学繊維を分解することができないので、廃棄された後にいつまでも環境中に残ってしまいます。
化学繊維は、軽くて強くて加工しやすいけれども、地球環境から考えると優しくないのです。

けれども、合成タンパク質から作った「クモの糸」は、原料として石油を使わないので、合成する時に大量の二酸化炭素を排出する事はありません。
またタンパク質由来であるために、バクテリアが分解できるのです。

軽くて強くて環境に優しい、まさに夢の新繊維なのです。
医療分野以外にも、釣り糸、防弾ベスト、電子部品の配線、光ファイバーなど、幅広い用途での応用が期待されています。
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